日本では、近年、少子高齢化社会が急激に進行しており、それによって、各種産業における人手不足が社会問題となっています。この問題を解消し、日本の社会的機能の維持、発展を促進する為に、労働力の担い手として外国人に対する期待が年々高まっています。
外国人の日本への出入国や、在留管理については「出入国管理及び難民認定法」(入管法)に規定されており、この法律を基本法として、その他の関係政省令を基に、法務省の外局である出入国在留管理庁(ISA:Immigration Services Agency)によって本国の出入国管理行政が行われています。入管法は、社会の実情に合わせて、これまでに何度か改正が行われてきています。それにより近年では、外国人の日本での就労に対する規制緩和が進められ、日本企業や、海外企業の日本での事業展開による外国人の採用強化によって、在留外国人の人口は年々増加しています。今後もこうした流れは続いていくものと思われ、我々は、この現状について正しく理解し受け入れる事が必要です。
多くの外国人が住む日本社会において、国民の安心、安全な生活を確保する為にも、外国人の日本への入国と在留に関する管理を適正に行うことの重要性がますます高まっています。
外国人の方が日本に入国する際には、入管法上有効な旅券(passport)と、在外公館が発給した査証(visa)が必要です。(査証相互免除措置実施国・地域対象の外国人は、観光など「短期滞在(short stay)」により日本に上陸する場合、査証は不要です。)これらを入国した空港等で入国審査官に提示して上陸申請を行い、上陸許可の証印を旅券に受けなければなりません。
日本では、外国人の在留管理を行なう方法として、「在留資格制度(status of residence system)」を採用しています。この在留資格には就労資格や非就労資格や居住資格などが有り、現在29種類に分類されています。この制度により、上陸許可の際、その外国人は、日本において行う活動や有する身分や地位に応じた「在留資格」と「在留期間」の決定を受けます。また、上陸審査の結果、3ヶ月以上在留するなどの「中長期在留者(mid-to long term residents)」に該当する事となった者に対しては「在留カード(residence card)」が交付されます。この在留カードによって、中長期在留者の身分関係、居住関係及び活動状況を正確かつ継続的に把握している為、カードの登録情報が変更となった際には速やかに届出を行なわなければいけません。
近年の法改正により、特定の分野での不足する人材の確保を目的として、在留資格として「介護(nursing care)」、「特定技能1号、2号(specified skilled worker (i), (ii))」が新設されました。また、在留管理の適切な運用の為、不法滞在者に対する罰則、在留資格取消事由についても整備されています。
<1の表(就労資格)>
種類 | 例 |
---|---|
外交 | 外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員及びその家族 |
公用 | 外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者及びその家族 |
教授 | 大学教授等 |
芸術 | 作曲家、画家、著述家 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師 |
報道 | 外国の報道機関の記者、カメラマン |
<2の表(就労資格 ※上陸許可基準適用対象)>
種類 | 例 |
---|---|
高度専門職 |
(1号、2号イ)研究、研究の指導、又は教育をする活動 (1号、2号ロ)自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動 (1号、2号ハ)貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動 (2号ニ)2号イからハまでのいずれかの活動と併せて行う「教授」「芸術」「宗教」「報道」「法律・会計業務」「医療」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」に対応する活動 |
経営・管理 | 企業等の経営者・管理者 |
法律・会計事務 | 弁護士、公認会計士 |
医療 | 医師、歯科医師、看護師 |
研究 | 政府関係機関や私企業等の研究者 |
教育 | 中学校・高等学校等の語学教師 |
技術・人文知識・国際業務 | 機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者 |
企業内転勤 | 外国の事業所からの転勤者 |
介護 | 介護福祉士 |
興行 | 俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手 |
技能 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人 |
特定技能(1号、2号) | (1号)特定産業分野12分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務 |
技能実習 |
技能実習生 |
<3の表(非就労資格)>
種類 | 例 |
---|---|
文化活動 | 日本文化の研究者 |
短期滞在 | 観光客、会議参加者 |
<4の表(非就労資格 ※上陸許可基準適用対象)>
種類 | 例 |
---|---|
留学 | 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の学生・生徒 |
研修 | 研修生 |
家族滞在 | 在留外国人が扶養する配偶者・子 |
<5の表(法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動)>
種類 | 例 |
---|---|
特定活動 | 外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 |
種類 | 例 |
---|---|
永住者 | 法務大臣から永住の許可を受けた者(入管特例法の「特別永住者」を除く) |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者、子、特別養子 |
永住者の配偶者等 | 永住者・特別永住者の配偶者及び本邦で出生し引き続き在留している子 |
定住者 |
法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者としての活動 |
現在の出入国管理行政においては、日本への上陸や在留の為の様々な申請が定められています。現在では、在留資格申請のほとんどの種類でオンライン申請が可能となっています。
上陸の際に、この証明書の交付を受けて査証発給申請を行うことが一般的となっています。この証明書の交付を受けた場合、上陸を許可する為の条件について、既に法務大臣による事前審査が済んでいるものとして扱われるため、在外公館での査証発給がスムーズに行われます。この証明書は有効期限が交付後3か月ですので、それまでに査証を発給し、日本への上陸申請をし、入国審査官に提示しなければいけません。
在留外国人について、在留中に活動する内容や、地位、身分の変更があった場合に必要な申請です。
在留資格取得時に定められた在留期間を更新する際に必要な申請です。6か月以上の在留期間を有する者の場合、概ね3か月前から満了日まで申請の受付が可能です。
外国人が現に有する在留資格で行う事ができる活動以外の就労活動を希望する際に必要な申請です。例えば、非就労資格である「留学」を受けて在留する留学生がアルバイトする際に、この申請が該当します。ただし、就労活動には様々な条件があるので注意が必要です。(1週につき28時間以内で就労可能など)
日本での出生や日本国籍離脱などの事情により在留資格を有さない外国人が、日本での在留を希望する場合に必要な申請です。この場合、在留資格を受けなくても、事由発生から60日間は在留する事が可能ですが、その後も在留する為には事由発生後30日以内に申請を行う必要があります。
上記が主な上陸、又は在留に関する申請であり、主に、申請者本人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局に申請します。申請によっては手数料が係る場合があります。また、この他にも「永住許可申請」、「就労資格証明書交付申請」、「再入国許可申請(みなし再入国許可)」などの各種申請が入管法に定められています。
※在留資格の各種申請に関するより詳細な情報は、当事務所ブログに掲載しておりますので、是非そちらもご覧ください。(HPのメニューにリンクを貼っています。ブログ内の「入管業務(在留資格)」カテゴリーをご覧ください。)
行政書士は申請取次制度の対象者となっており、一定の研修を受け出入国在留管理庁に届出を行なった者は「申請取次行政書士」として、外国人やその代理人の方からの依頼により、在留資格に関する各種申請を入管局に取次ぐことができます。
当事務所では、外国人の方の入国・在留に関する様々な申請についてサポートさせて頂きます。日本での就労を希望する外国人の方やそのご家族、また、外国人を雇用したいとお考えの企業の方は、是非一度、ご連絡下さい。
※当事務所は、申請取次行政書士の届出を令和5年9月上旬頃に完了予定です。
現在のところ、申請書類作成のみ可能であり、入管局への書類提出はお客様ご自身で行なって頂く必要がございますが、申請取次届出完了後はオンライン申請を利用するなどして各種申請を行う事ができます。
参考:
1.出入国在留管理庁, 「手続きの種類から探す」,(2023年2月1日取得, 出入国在留管理庁ホームページ)
2.出入国在留管理庁, 「最近の入管法改正」, (2023年2月1日取得, 出入国在留管理庁ホームページ)
3.佐野秀雄、佐野誠, 2017, 第5版, 「よくわかる入管手続 基礎知識・申請実務と相談事例」, 第1編~第2編(p.1~p.57), 日本加除出版