建設業許可とは、法人や個人において、元請負や下請けの場合に関わらず、ある一定基準以上の建設工事を請け負う際に、営業所の所在地によって、国土交通大臣、または都道府県知事の許可を受けなければならないというものです。現在、建設業は29種類に分類されており、請け負う工事に対応した種類の許可を取得する必要があります。(平成28年6月に「解体工事業」の種類が新設され、解体工事業を請け負う場合、これまでの「とび・土工工事業」から、新たに「解体工事業」による許可の取得が必要となっています。)
請け負う建設工事が下記のものである場合は、許可取得は不要です。反対に、下記以外の工事を請け負う場合には許可取得が必要となります。
※許可が不要な建設工事
ア)「建築一式工事」の場合
工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事(税込み)、又は延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事(主要構造部が木造で、延べ面積の1/2以上を居住の用に供するもの)
イ)「建築一式工事」以外の建設工事の場合
工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事(税込み)
「解体工事業」を請け負う場合、軽微な建設工事であっても、他の法律の定めにより、別で「解体工事業」の登録が必要となっており、施工する場所の都道府県ごとに登録が必要です。ただし、「土木工事業」、「建築工事業」、「解体工事業」の建設業許可を受けている場合、登録は不要です。
許可を取得している建設工事の施工に際し、その工事に従として付帯する他の種類の建設工事(その付帯工事が軽微な建設工事でなくても良い)
注)その付帯工事(軽微な建設工事以外に限る)を実際に施工する場合、その種類の建設業許可を受けた業者に下請工事を発注するか、自ら施工する場合、その建設業の許可を取得するのに必要な技術者を置いた場合にのみ施工することができます。
建設業許可は、営業所の所在地により、国土交通大臣又は各都道府県知事が許可を行います。
許可行政庁:本店の所在地を管轄する地方整備局長等
許可行政庁:営業所の所在地を管轄する各都道府県知事
注)「営業所」とは、本店、支店、若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所であり、請負契約の見積り、入札、請負契約締結などの実体的な業務を行っていることが必要です。また、これらの業務を実際に行っていなくても、他の営業所に対して請負契約の指導監督を行うなど、建設業に係る営業に関与している場合は「営業所」とみなされます。したがって、単に登記上の本店であり、実際には建設業の営業を行わない店舗や、建設業とは無関係な支店、営業所は、この「営業所」に該当しません。なお、大臣許可、知事許可の区分は、営業所の所在地によってなされるものであり、営業し得る区域や工事を施工し得る区域に制限はなく、全国どこでも行う事ができます。
建設業には一般建設業と特定建設業の区分があり、1件の建設工事に関して発注した下請工事の下請契約金額により、そのどちらかの許可を受ける必要があります。
「一般」か「特定」かの判断基準:
発注者から直接工事を請け負った元請業者が、下請業者に工事を発注し、その全ての下請契約金額の総額が4,500万円以上(建築一式工事に関しては7,000万円以上)となる建設工事を行う際には、特定建設業での許可が必要
上記以外の建設工事は、全て一般建設業となります。つまり、元請業者であっても、下請工事の契約金額の総額が上記基準以下である場合や、下請業者に工事を発注せず、自社で施工する場合には一般建設業となります。また、下請業者が更にその下請業者に工事を発注する場合は、契約金額に関わらず一般建設業で工事を施工することができます。なお、発注者から直接請け負う工事の契約金額については、特定・一般ともに制限は有りません。
特定建設業の許可が必要なのは、判断基準を超える元請業者のみ
建設業許可では、申請種別が「新規」、「業種追加」、「更新」に区分されています。
新たに許可を受けようとする場合(新規)や、現在取得している許可を他の行政庁によるものに換えたい場合(許可換え新規)、異なる建設業の種類で「特定」と「一般」の許可を取得したい場合(般・特新規)があります。なお、1つの種類について「特定」と「一般」の両方の許可を受けることはできません。
既にある種類の許可を「一般」で受けている業者が、新たに別の種類で「一般」の許可を取得したい場合(「特定」についても同様)
建設業許可には5年の有効期限が有り、継続してその種類の工事を請け負いたい場合は「更新」となります。この場合、許可の有効期限の30日前までに手続きをする必要があります。許可更新の受付期間は各都道府県によって異なりますが、兵庫県の場合、有効期限満了日の3か月前から申請することができます。
建設業許可を受けるには以下の5つの要件を満たしている必要があります。これら要件についての詳細は各行政庁が公開している申請の手引きに案内があります。行政庁は、これらの要件を満たしているかどうか、申請書類や確認資料でチェックします。
①経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者として、国土交通省令で定める基準に適合するものであること
②専任技術者が各営業所ごとに常勤していること(※)
専任技術者・・・許可を受けようとする建設業の種類に関して、一定の資格又は経験を有する技術者のこと
③請負契約に関して誠実性を有していること
④請負契約を履行するに足る財産的基礎、又は金銭的信用を有していること(※)
法人は決算報告書、個人事業主は青色申告決算書等、また、必要に応じて確認資料によって確認する。
⑤欠格要件に該当しないこと
(※)「一般建設業」と「特定建設業」で必要な要件が異なる。
⇒各要件の詳細はブログで解説しております。是非、ご確認ください。
建設業許可申請書、添付書類一式(各種確認資料含む)です。具体的にどの書類が必要かは、申請者、申請区分、申請先の各都道府県によって異なりますので、事前に確認が必要です。
大臣許可の場合
本社、本店の所在地を管轄する国土交通省地方整備局に、持参又は郵送により提出します。
注)兵庫県の場合、令和2年4月1日以降、直接近畿地方整備局に提出し、兵庫県庁を経由しません。
知事許可の場合
営業所の所在地を管轄する各都道府県の土木事務所等に持参して提出します。
申請に際して、許可・申請区分によって所定の登録免許税、又は許可手数料を事前に納付しなければなりません。
許可・申請区分 | 大臣許可 | 知事許可 |
---|---|---|
新規(新規、許可換え新規、般・特新規) | 15万円(登録免許税) | 9万円(許可手数料) |
業種追加、更新 | 5万円(許可手数料) | 5万円(許可手数料) |
「新規」の各区分では、大臣許可で15万円(登録免許税)、知事許可で9万円(許可手数料)となっており、「業種追加」、「更新」では、大臣許可、知事許可共に5万円(許可手数料)となっています。当事務所に申請手続きをご依頼頂く場合には、別途、報酬や諸費用をお支払い頂きます。
許可を受けた後に、申請内容に変更や欠損が生じたとき、又は毎事業年度が終了したときには「変更等の届出」を、また、その建設業を廃止等したときには「廃業等の届出」を、それぞれ一定期間内に許可行政庁に対し行わなければなりません。
行政書士は建設業許可申請を業務として行う事ができる書類作成の専門家です。
当事務所では、建設業者様が請け負う工事について、許可の要否、種類、区分、要件などについてご確認させて頂いた上で、申請書作成、資料収集、書類提出を行います。また、必要に応じて、許可取得後の各種変更、業種追加、更新手続きまでサポートさせて頂きます。建設業許可の取得をお考えの事業者様は、是非、当事務所に一度ご相談ください。
参考:
1.兵庫県土木部契約管理課, 2023, 「建設業許可申請等の手引」, 兵庫県庁, (2023年2月16日取得, 建設業許可申請等の手引)
2.河野順一, 2017, 第4版, 「建設業許可の申請手続きをするならこの1冊」, 第1章~第4章(p.9~p.70), 自由国民社